第63回文化庁芸術祭参加作品 CD+BOOK JINMO『Ascension Spectacle』こそミュージシャンが必要なもの。
decoding of the JINMO『Ascension Spectacle』



献辞『Ascension Spectacle』
嘉ノ海幹彦(FM 「MUSICA VIVA」DJ)

現代の我々の周りに流れている音楽のほとんどは17世紀以降に考案された狭義の西洋音楽12平均律のOSに準拠している。

そして、何気なく気持ちよく聞いている音楽はその感覚の域を出ることはない。

なぜならOSだから。

もちろんそれなりのすごい体験もできる。

感動・驚愕・困惑・快感…。そのようにして西洋音楽という一ジャンルの音楽はロマン主義的変貌を遂げてきた。

だがそれらは、JINMO氏の『Ascension Spectacle』で我々の感覚が一変することとなった。

耳のOSが書き換わり、それこそマーシャル・マクルーハンが言うようにテクノロジーが聴覚や知覚変化をもたらしまったく新しい器官を手に入れた体験となった。

それはEXPANDED(拡張)された聴覚や知覚が新しい耳を獲得したことを意味し、我々はきっとアトランティス紀には聞こえていたかも知れない<音>のソラリスの海に浸っていくのである。

この『Ascension Spectacle』によって、音楽が聴くものではなく体験するものであるという原則に立ち戻って、いつも聞いている音楽が”如何に特殊で”あるのかを実感する。

音楽の捧げものではなく、捧げものの音楽とは何なのか。



今年の3月にPEPPERLANDがリリースした CD+BOOK JINMO『Ascension Spectacle』が平成20年度、第63回文化庁芸術祭参加作品に多くの選考作品のなかから撰定されました。日本で最も権威のある芸術祭に参加が決定したわけです。マイナーなレーベルであっても真剣に音楽に取り組み文化の根底に潜む問題点を明らかにすることで、その評価を一転させることが可能となること。例え、どんなに小さな動向であっても、新しく生まれつつある新しい動向が今日の搖がない価値観を転倒させ得るスペクタクルを信じ、これまでPEPPERLANDは"スペクタクル"ということを重視してきましたが、その考えが間違っていなかったことを図らずも証す結果となりました。
価値付けられていなくても実験的な挑戦を行うミュージシャンやアーチストのスペクタクルを積極的に支えて行きます。その為にPEPPERLANDは存在します。現在は、誰からも見向きされないような表現でも、その中に真に新しいものの萠芽があれば積極的に表現の錬成場としてサポートしていきます。
今回掲載いたしましたインタビューは、JINMO『Ascension Spectacle』リリース時にこのCD+BOOKLETの重要性について熱いメッセージを楽器演奏者の立場から伝えてくれた、トップレベルのギターリスト・横山修氏に語っていただきました。また、収録場所のスタジオを提供して頂きましたミュージシャンの河原龍峰氏にも対談に加わっていただきました。
(この年末パンフレット作成時点では文化庁の発表はありませんが、何らかの受賞が決定しましたら後日お伝えしたいと思います。)

【横山】横山修   【河原】河原龍峰
聞き手:能勢伊勢雄




●プレーヤーは裏の音を聞け!!!

【横山】この本(CD+BOOK JINMO『Ascension Spectacle』)を見て一番びっくりしたのは、倍音に対してものすごく詳しく書かれている。例えば、Aの倍音に関して、Aの正音に対しての倍音、それに関してのプレーヤーじゃない人の言葉、プレーヤーがプレーヤーじゃない人にどうやってギターを弾いているのかを言うと、「そんなもん適当に」とかすごく淡白になる。でもプレーヤーじゃない人が音のことを、例えば5度の音一つにしてもすごく長い文章になる。だからこれを実際プレーヤーに見せたら「分からん」って言うと思うよ。実際ギターで弾くとすごく良く分かる。倍音の中で一番分かりやすいのはキーが無い音。例えばドラム。今のドラマーは"タン"と叩く音だけ、打面のチューニングだけで、裏のヘッドのチューニングがすっごく下手なんよ。なんでフロントにはちょっと固めのヘッドがあって、裏にはクリアがあるか? このことの意味を知って欲しい。『ヘイジュード』の5:30から6:30までちょうどフェイクの一番盛り上がるところで、リンゴスターがバスドラをそれまではミュートで踏んでいるのに、そこでは、離して踏んでいる。あのときに異様にボリュームがポンと上がった感じがする。音量はまったく一緒なのに!!! そのことと倍音はものすごく関係している。例えば、ギターに関しても「鳴らす」と「音がでかい」は違う。Aに対しての裏の音が分かっている音の出し方と、正音だけで考えいている音の出し方とでは、アンプのセッティングも変わってくると思う。チューニングにしても次の曲はGなのにEの開放弦でチューナーで合わせた場合に、Gで弾いて合っているとは限らない。3フレットを押さえた時のジミヘンとかでも開放弦が全然狂っているし、チューニングするときに耳でしているから。狂っているんだけど…、曲に入ったらバッチリ合っているな。だからそういうことなんじゃないかな、倍音っていうのは。声に関してもそうだし。正音じゃなくて、裏の音に気づかないとプレーヤーはだめだと思うよ。今のプレーヤーはそういう人が少ない。そこを実音として自分らが教えてあげないといけないのじゃないかな。それを一回教えて説明した上で、JINMO『Ascension Spectacle』を見せたら皆良く分かるよ。例えば、4度とか5度の音はマイナーでもないしメジャーでもない。聞く側によってそれが判かる。だから、そのときの感情によって全然変わる。でも、Aマイナーとかナインスとかイメージがはっきり付けられているコードであっても、それに対しての正音が、Aだとしたら、Aに対しての4度の揺らぎの無い音と5度の揺らぎの無い音とそれに対する倍音というのは、プレーヤーの感情が一番出る。コードっていうのは意外に明確で和音でバンと出したときに、受け止め方が簡単だけど、4度5度の揺らぎの無い音は全然そのときの人の感情や気持ちやパワーが出るんじゃないかな。それがすごく分かりやすい。どう思います? 僕はそんな感じがするんだけど。だからミュージシャンにJINMO『Ascension Spectacle』を読んでもらいたい。僕らがいつも言っている裏のリズム、裏の音を考えながら演るっていう。ドラマーにしても"ドッタトドンタ"て叩いたとしても、今のドラマーってバスドラを放せれないんよ。"ドッタトド〜ンタ"だったら全然変わってくる。ミュートの仕方も変わるし。

【河原】なんで放せんのかな?

【横山】それが不思議なんよ。

【河原】きっちりした音として弾きたいのかな。

【横山】たぶんそうだと思う。それとあと、楽なんだと思うよ。"ド〜ン"って放したらその分だけ体勢が不安定になる。テクニック的なものもすごくあると思うだけど。"ド〜ン"っていう音に対しての感情移入が無いっていうか、ドラマーはもう"ドン"ってやって、おけばいいみたいな…。倍音と言うのは一番はドラムであって、上手いパートは同じPAでも音量が上がる感じがする。あれって不思議。アレは音量じゃなくて音圧。音圧は響きだと思う。響きというのが倍音なんだと思う。その辺のことを考えていったら、例えば、バンドのメンバーが一人やめて、テクニックのある奴をメンバーに入れた。でも、なんだかバンドがしょぼい。その原因は倍音なんだと思う。裏の響きみたいなものが全然違うんだと思うよ。

【河原】演奏者は意識せずに感じて、音の深さ、音を出すことで他の音を拾い上げるみたいな所を、感覚的に分かっていて、そういう風に音を作っていく。それで結果的にバーンと音圧が上がるみたいな音になるのかなと思う。

【横山】その倍音の響きがものすごく心地良いんだと思う。聴いている側から見れば、今ってそういうバンドはすごく少ない。レコーディングにしてもそうだし、特にデジタルになって、昔のアナログはその辺の倍音がノイズだったりするわけだけど…。逆にそれをノイズだと思うのかな? 倍音とはちょっとまた違うけど、倍音から響いた響きだったり振動だったりするものを今の人はカットしているんじゃないかな。ノイズと捉えて。だから音がペターッとしている。

【河原】確かに倍音成分が感じられないペターッとしている音になっている。

【横山】そうなんよ。大貫妙子がリリースしたアルバムで、昔の70年代の機材をそのまま引っ張り出してきて録ったものは全然音が違うのよ。確かにもうノイズも含まれているんだけど、デジタル特有のノイズではなくて、温かいノイズというか、逆に"響き"まで再現しているみたいな…。すごく倍音に対しては僕はこだわっているから、よく二人(河原氏)でも話をするけど、音じゃない部分に音を感じないと駄目!!! 空気感とか。

【河原】逆に今のそういう倍音とかを意識しないバンドというのは、倍音を良しとしないんじゃないかな。そういう音の捉え方、感じ方をこれまでしてきたんじゃないかな? だからそういう音楽になってきているんじゃないかな?

【横山】これに入っているJINMOさんのCDの音はAの倍音だけだから(笑)。でもずっと聴いていたらその時の感情で暗い曲になったり明るい曲になったりする、何か独特のパルスみたいな、独特の波みたいなものがあるんよ。聴き方によって。

【河原】頂点にAがあって、ピラミッドみたいに音がガーって降りてきている感じ。

【横山】そうだよ!!! そうそう(笑)。だから一つの音に対してもそうだから、それが例えば3人のバンドだったらお互いの裏の響きが分かっていて出す音だったら、最高に最強だと思うよ。

【河原】それを最強と感じるかどうかだよ。今のバンドが…。

【横山】ああ、そうやな。

【河原】最強とかを感じず、もっと違う感じ。極端に言えば「ダサイ」とか。

【横山】ああ〜、あるね…。そうか。

【河原】そんな「ダサイ」感覚を持っていると思うよ。



●響いているのが"倍音"だ!!! 

【横山】僕はギター、ベース、ドラムの倍音から響いたものが3つ合わさったものがグルーヴだと思っているんよ。グルーヴってすごく曖昧な言葉だし、そのバンドの中のうねりだったり、独特なバンドの「これはオレの指じゃねえ」みたいな、音楽の神様に叩かされているみたいな…。バンドってそういう一瞬がある。その時はすごくうねりが出ていて、ボリュームは変わっていないのに、波ができている。それがグルーヴだと思う。そのグルーヴの元は倍音だと思う。不思議なのは、若い頃バンドのメンバーが抜けたりしたら、上手い奴を入れたら良くなるんじゃねえかとか…考え易いけど、全然ちがうよな。

【河原】それは分かるなあ(笑)。

【横山】だいぶいろんなもので勘違いしてきたもんな。下手なのがショボイかって言うとそうでもないからな。「すごい」と「上手い」はあんまり比例しないような…。

【河原】偶然、倍音の音の塊になることはあると思うよ、どんなバンドだって。それを偶然では無くてバンドの音としてやるには倍音を明確に"意識"することが必要になる。

【横山】「お互いを聴く」ってことは大事だと思う。この前も遊神(能勢遊神)が言っていたけど、一生懸命チューニングしても分かってくれないとか…。やっぱり、お互いの音を聴き合うのは大事なことだと思う。自分のパートを自分で考えるのは当たり前のことであって、バンドなわけだから、具体的じゃない音が一番大事なんだと思うよ。響きとかトーンとか、それが"倍音"だと思うんよ。昔から「倍音」って言ってる。

【河原】倍音は実際に鳴っているからな。

【横山】鳴っている!!! それで、よく僕が言うのは、チューニングが悪いバンドがいるけど、あれはチューナーで弦が狂っているわけではなくて、例えば、しっかりしたビブラートをすればちゃんと合うのに、中途半端なビブラートをして、わざわざ狂わしている。普通にストレートに弾けばいいのに、そこに"色気"が出ちゃうみたいな…。やっぱり、お互いのパートを聴くことが大事かな。しかも裏の。ステージに立ったときに外音(そとおと)より中音(なかおと)が大事。やっぱり。そのときに音じゃなくて"響き"が大事なわけで、倍音だと思うんだけどな…。

【能勢】響いているものって基本的に倍音ですよ。

【横山】そうですよね。

【能勢】倍音を使って響かせているんですよね。

【横山】だから、良い倍音と悪い倍音があるんですよ。

【能勢】そうです。

【横山】質なんですよね。だから倍音に一番"プレーヤーとしての人"が出るんじゃないかな。響きって言うのは究極じゃないですか。譜面でも表せないし。

【能勢】PEPPERLANDのPAでクラブミュージックをするときには、DJベースになるわけで、楽器じゃないからスピーカーのセッティングでどこまで本当に響かせられるのかが問われてくる。楽器で無いぶんだけに余計に"響き"が出せれなかったら音楽のリアリティーが消えていく。

【横山】ホントにそうですよ。

【能勢】PAエンジニアにいつも言っているのは、「スピーカーを響かしてくれっ!!!」て言うんだけど、なかなか分かってもらえない。最近は変わりつつあるけど…。長い間かかりました。

【横山】なるほどね。でもそういうのってその時の空気感、エアー感、例えば人が入る入らないでは全然違うし、動きによっても変わるし、ちょっとのフェーダーの目盛りでも響きが変わる世界なんで。

【能勢】だからその倍音を聴く耳がなかったらPAもできないと思う。もちろんバンドの人もそうあって欲しいし。

【横山】絶対そうですよ。だからこの本はそういう風に考えたら「実践的な本」ですよ。一番プレーヤーが見るべきだと思うな。具体的な数字(自然倍音音階の周波数表記)も出ているし。あの『ヘイジュード』の後半の部分は絶対に聴くべきだと思うな。一番分かりやすい。あれがグルーヴだと思うし、ビートルズの凄さを感じるよな(笑)。

【能勢】この本をどうして作ろうとしたかというと、慶子(能勢慶子)さんが昔「チューンナップ」というバンドをしていのですが、バックにナカタケ君がいたりとかしていて…。

【横山】はいはい。

【能勢】それで慶子さんが歌詞を高揚して歌ったら、「お前音外れている」って言われて何時も後ろから尻を蹴られていたんよ。

【横山】(笑)

【能勢】だけど、僕は慶子さんの例だけじゃなくて、他のバンドのリハーサルでもキーボードの人なんかから、「音が外れている」という発言があるシーンを今まで何度も目撃しているわけですよ。それで、今日使われている音階を疑問に感じ始めたのです。「キーボードの鍵盤数で本当に人間の感情のこもった<声>が再現できるのか?」と思い始めたわけです。実は、あんなに単純な12しかない音階で、人間の声が再現できるわけがない。慶子さんが尻を蹴られたりするようなことが起きる原因は、逆にキーボードの音階のほうに問題があって、演奏が人間の声についていけてないのが原因ではないのか? と考えるようになったのです。そこら辺から、人間の声と響きあうキーボード、つまり音階はどういうものなのかとか思いだして、それから音階がずっと気になっていた。それをJINMOさんに投げかけていったわけですよ。JINMOさんにこういう言い方をしたら失礼だけど"奇特な人"なので、よくこんなしんどい仕事を5年間もかけて完全音階を探すのに時間を割いてくれたのです。栄養失調に近い状態までなって、閉じこもり状態でやってくれたんです。その間、僕も音階のことを調べていったのですが、古代から音楽は音階のことを巡って悪戦苦闘してきた歴史なんですね。ハリー・パーチのCDを聴いてびっくりしたんだけど、1オクターブを43分割した細かい1オクターブがある。この音階でパーチが歌に演奏をつけている『New York highball』という曲があって、その曲に出合った時には驚きました。ものの見事に演奏が声についていっている。あれを普通のピアノで演奏したら、まずパーチのようには成らないと思ったと同時に、ミュージシャンが疑問を感じずに使っている音階の不完全さに気付いたわけです。そのようにこちらの耳が切り替わると、今日使われている音階が結構曖昧だというのが実感できます。分かります!!! そこら辺から十二音階というモノを疑ってもいいんじゃないかと思いだして、それで完全に響きあう音階というのは出来ないのか? ということになって行った訳です。それから最初は「純正調音階」という古い音階が、響きに関して無理の無い音階だという理由で、僕らは信じていたから、それに1年ぐらいJINMOさんと取り組んだわけです。それでJINMOさんの『龍が叫ぶとき』という曲を純正調音階でやったんだけど、分かったことは純正調も実は狂いがあるっていう事です。で、そこから後5年間がJINMOさんが苦労の末に、202の音高からなるひとつの循環音階として出すことが出来た。202音ということは88鍵のフルキーの約2〜3倍分の鍵盤がいるわけですよ。音階の表現域を全部クリアしようとすればそういうことになる。しかも一切の不協和音を生じさせないキーボードが誕生します。話が戻りますが、今までのボーカルの変化に追従していけないような、十二音階の12のグリッド数では無く202音のグリッドを持つ完全音階を作りたかった理由が、このCD+BOOKを出そうとした原因なんですよ。

【横山】なるほど。

【能勢】それで、完全に響きあうためには自然倍音しかないんですよね。

【横山】分かります。

【能勢】だから、自然倍音で音階として成立させ、しかも、なお且つ演奏可能な音階の解釈が必要だったわけです。そのために計5年かかったんです。その間に音階について、僕が分からないことがあって、横山さんと河原さんに教えてもらいながらきた訳です。本当に感謝しています。

【横山】いや、でもすごいですね。その話は。




●音階やオクターブもあったもんじゃあない!!! 

【河原】僕なんかは歌を歌うから、そのときの歌ってどんな歌になるのかなって思いますね。

【能勢】人間の声は倍音がすごく多いから、その響きと完全に調和した演奏が可能になりますから、河原さんの歌がもっと強烈に出していけると思います。音が完全調和して響き合って耳に届くんですから。

【河原】それってものすごいことだと思うんですけど。

【能勢】だからその「ものすごい」ことを僕はしたかったんです(笑)。

【横山】【河原】それも分かります(笑)。

【能勢】音階のことについては知らないことだらけでしたので、僕は横山さんと河原さんに教えてもらって理解していったわけです。しかも、音階制作と演奏はJINMOさんに頼むという…、本当にずるいことをやってたんですけど…。

【横山】いえいえ。でも、例えばひとつの十二音階にしてもこの音は実音ではないって考えるのは大事なのかもしれないな。ボーカルのほうを優先にして考えるっていう。どうしても楽器のほうに合わせろという感じになるじゃない。で、特にキーボードの人も倍音までは英才教育でも学ばないから。響きぐらいは教えるのかもしれないけど…。だから、歌と一緒にやるのだったら、歌に対して楽器のほうが倍音を意識するという考え方は大事なんじゃないかと思います。一人ひとり全然声の響き方が違うし…。

【河原】大事だとは思うんだけど、逆に僕らも歌を作って歌ってきた中で、きっちりした体験があったわけじゃないですか。

【能勢】そうそう、現代の人だったら生まれたときから十二音階に慣らされているわけで。

【河原】それを使って歌を作ったり、歌ってきたわけで。それっていうのは、ひょっとしたら声と楽器のズレみたいなところで出来てきたのかなとも思ったりする。

【能勢】今の音楽はそうやって出来てきたと思います。それから十二音階そのものも不完全なのですね。例えばピアノとギターは絶対合わないですよ。

【横山】ああ、合いませんね。

【能勢】そういう楽器ですよね。なお且つピアノが「完全楽器」と言われていて、ピアノを基本にしているではないですか。それで、そこに鎮座されている音階が十二音階なわけで…。しかも今は十二平均律音階です。

【横山】腹立つなあそれ(笑)。

【能勢】それで、ギターというのは基本的に弦長を分割していくわけですから、音高で調律した単弦を振動させるピアノの音とは根本的に異なります。昔の時代だと十二音階じゃないピアノというのもあって、バロックの時代には、チェンバロというバロックコードを演奏するためのピアノがあったわけです。それが今は十二音階に落ち着いてしまった。このような観点から言っても十二音階自体が絶対的なものではないんですよね。

【横山】そうです。

【能勢】しかも十二平均律は、合奏するために、例えば、クラリネットとギターを合わすというときに、リード楽器と弦楽器という根本的に発音形態が異なる音で合奏する為に転調という手法をとらなければならなくなり、ここでも問題になってくるのが、"音階の問題"なんです。この問題を調整するために十二平均律音階なら聴感上許される範囲の音階として普及してきたわけで、学校教育でも十二平均律で習わされているわけですから…。僕の小学校のときの体験を話しますと、『さくらさくら』を先生のピアノで歌わされた時のことですけれど、何か自分の『さくらさくら』のイメージと余りにも異なっているという…。何でこんなに幅が狭いのか?という、戸惑いを感じたことがあるのですが、確かにちゃんと楽譜通りには弾いてくれているんだけど、どうもおかしいぞ!!!という記憶が今日まで残っているんです。

【横山】そういう気持ち悪さを僕もずっと持っています。だから、12音階はピアノがメインじゃないですか。僕らだったら、ツェッペリンだったり、クリームだったり、ジミヘンだったり、ジミヘンはキーが半分低いんよ。あの当時弦が太かったという事情もあったんだけど、演奏上でテンションを下げる為にということもあるんだけど…。独特ですよねジミヘンが出す音階って。コード感もマイナーでもないし、メジャーでもないみたいな。だから、聴く側が調感を足せられる。あの辺のロックを十二音階で考えたことなかった。

【河原】歌はアカペラで、楽器が何にもなくてただ歌っているのを聴いただけだったら、それこそマイナーにもメジャーにも聴こえる。

【横山】それで、さっきの話に戻るけど、慶子さんの声って倍音が多くて、それに合わすのはキーボードよりギターのほうが合いやすい。結局、倍音の問題です。音階じゃない。裏の音っていうか。だから村岡充君(テスト・パターン)とは合っているよな…。びっくりするくらい。だからあれも倍音の部分だと思う。充のセンスと。

【能勢】このCD+BOOKを作る過程で、いろんな作曲家の人にも質問を投げかけていったんですよ。現在ウイーンで音楽教育をされている日本人とか。その過程で何が一番びっくりしたっていったら、オクターブの音はどこに決めてもいいということです。だからオクターブを考える基準は、極限すると各自が勝手に決めても良いみたいで…。そうなってくると、じゃあオクターブって自由にとれるっていうことになります。それと、最初の音をどこに決めてもいいということはオクターブの終わりもどこにでも動かせるということですよね。

【河原】ギターとかは音叉を無視してチューニングできる。ドとレの間の1/4とかって。

【横山】意外にそういうチューニングのほうが不思議な曲ができたり、歌いやすかったり、きれいにハモるときもある。

【河原】しかし、それが不思議な感じに感じられない人が多いのよ。

【横山】ああ、やっぱり(笑)。曲を聴いて"安心感"が欲しいんよな。

【河原】だから440Hz(A)で決めないと駄目なんよ。ちょっとずらしても同じように聴こえているんだと思うよ。

【横山】それは結局、倍音じゃなくって正音メインで考えているから。だから幅が小さくなるんよ。

【能勢】音階やオクターブも作曲家などの楽典を扱っている人達の方が遥かに自由に考えていることを知って、僕はそれで考えがぶっ飛んだからね。「え〜!!!決まってないのか!!!」って。



●十二音階を疑え!!!グルーヴが欲しければ"倍音"を意識しろ!!!

【横山】そういう風に考えたら、音に対して遊びがあるバンドがあまりいない。ギター、ベース、ドラムのバンドの場合、ギターソロのときはギターは和音が弾けないから、ベース音しか鳴っていない。例えばEマイナーだとして、そのギターソロのときにベースはEしか鳴っていないわけじゃないですか。そのときにEマイナー以外のスケールが一発入ったときに出る独特のベースとギターの絡み、濁りっていうのかな、それって、マイナーでもないし、足して聴くことができる部分が音楽にはある。そういうバンドが不用意にキーボードを入れてやると、いきなりレンジが狭くなる。キーボードってロックの世界だったら僕はあんまり好きじゃない。歌がものすごく平均的になったりする。だからキーボードを扱う時にそのへんの感覚がすごく難しい。例えばフェンダーローズの"ポロン"という音とオルガンにしてもピアノにしても全然変わるし、それによってバンドってレンジが広くなったり狭くなったりする。さっき能勢さんの話で言われていたことが、「それじゃな」って思って聞いてました。だからキーボードが入っていきなりつまらなくなるバンドって多い。逆にキーボードが抜けて何か変な浮遊感が出たほうが足して聴くことができる。倍音がきれいに鳴る。うねり、グルーヴが出やすい。そういうことですね。

【河原】ドアーズなんかは特別よな。

【横山】ドアーズは特別。でもあそこはベースがおらんからな(笑)。フェンダーのベースオルガンか何かで弾いていた。あれもまた響きが独特。ペパーランドでも変則的な編成があるわけで、ケッチとか。ケッチは確か1音下げなんよ。ローDで弾いていると思うんよ。石原君(ケッチ)がどちらかというとLOWを出している。でも低音の響きではベースがいるバンドよりすごい!!!(笑)。

【河原】それで石原君の声が太く聴こえるのか。

【横山】あれ不思議だなあ。中途半端なベースよりケッチのほうが音が太い。音の捉え方、裏の音の意識。特に右手のピッキングってみんな一定の所でしている。それをフロント側にしたり、リア側にする。ピックアップの位置でもだいぶ変わってくるけど、それによって全然トーンが変わる。歪ましたら倍音がガバッと前に出るし、そのへんのニュアンスはキーボードなんかより自由度があると思う。キーボードって本当に十二音階な音だからあんまり好きじゃないな。

【河原】強く弾くか弱く弾くかしかない。だからな。

【横山】そうなんよ。

【河原】純正調で倍音が"ガー"ってきて、それに、歌に楽器で完璧に合わしたら、鳴りはすごいけど、デジタルの行き着くところみたいな感じもするんだけどなあ…。

【横山】その辺って微妙よな。

【河原】歌うほうとしては、今の人たちはそういう音として聴いていないわけで、すごく淡白に聴こえるんじゃないかな。

【横山】聴く側によって変わってくるっていうことだよね。

【河原】まあ「聴き方が悪い」とは言わないけど。

【横山】(笑)。それは駄目だろ!!!

【河原】NGだな(笑)。でもそんな感じしない?

【横山】するよ。

【河原】音圧としてはすごいんだけど、我々がすごいと想像するだけだから。

【横山】正音に対しても曖昧なやつが多いじゃない。だから倍音っていう裏で鳴っている音を確信することによって、音楽って全然変わってくる。だから響きなんよな。12音で区切るのはおかしいからね。どう考えても。人間の声の倍音って本当に複雑なよな。

【河原】ホーミーとかどうなっとん。

【横山】ほんとそうよな。ヨーデルもそうだし(笑)。そういう風に考えたら民謡でもそうだし。楽器って人間の声に比べたらものすごくしょぼいものだと思うよ。

【河原】まあ、人間の声が最初にあったんだとは思うけど…。

【能勢】もちろんそうでしょ。音楽の源流でしょ。

【河原】何で音を足さないといけなかったのかな?

【能勢】それは、音が人間の感情を引き出すから。

【横山】ああ、だからそう考えると「響き」でしょうね。響き=倍音でしょうね。そこを倍音と捉えずにコードとか淡白に捉えてしまう。最近確かにサンプラーとかの色々なリアルなものは出ているけど、所詮ラインレベルなもので、生のグランドピアノを持ってくるやつはほとんどいないわけで、そのシュミレートされたものをラインで出し演奏しても倍音というのはまた違ってくる。

【能勢】その点が大切ですよね。倍音の相乗効果は産み出しにくいですよね。

【河原】エフェクト音みたいなものだよな。自然にかぶさってくる倍音と違うものね。

【横山】最近シンセとかでもボルタメントとか使っていてちょっと"ウワンウワン"した音も出るし、今どっちかというとピアノというよりシンセのほうが逆にキーボード的な感じがするんだけど。ピッチがはっきりしない。ピアノも確かに弦だから、あれをポンと持ってきてくれないと駄目だと思う。だから、ラインで出しているキーボードの中で歌と合わないとかって言うのもおかしい話で…。

【能勢】いやいや、音階の解像度、つまり音回数の問題もあるわけで、歌と合わすためには12音のグリッド数も障害だよ。少な過ぎる。

【河原】キーボードだけがモノが鳴ってないよな。

【横山】そうなんよ。(ステージ上の)中音もモニターだけで。俺らのキーボードっていうのはフェンダーのローズぐらいで終わっているんだけど(笑)。CP70とか生で鳴らないとな…。フェンダーのローズは鉄琴と同じ原理で、一緒にやっていてすごくライブ感がある。シンセとやっていても(モニターだけで)全然無い。

【河原】今のバンド連中に話を戻すと、そういうのってやらない。そうだからといって、やらないじゃない。

【横山】そうね…。

【河原】我々が聴いてきた感じ方と最近の連中が聴いてきた音の感じ方は全然違う。

【能勢】だから「自然倍音完全音階」というのを周波数で公開したんだけど、今までの五線譜では書けないから、これをプリセット音源にして、キーボードに使用音域を分割アサインして呼べるじゃないですか。




●BLUEROOMのコンセプトがデジタル卓の必要性を語り、 ピアニッシモは大箱では体験不可能だ!!

【横山】そうなってくるとPAの環境にもよりますよね。超フラットじゃないと駄目ですね。

【能勢】だからPA卓をアナログからデジタルに岡山でも一番早く導入したんですよ。超フラットなデジタル卓が逆にありがたいわけです。PAのスピーカーを含めてPAのシステムは、オーディオと根本的に違っていて、音を作っていかなければならないモノです。その点がオーディオスピーカーと根本的に異なるわけです。その中に於てのフラット性とは何か? という問題を捉えないといけない。

【横山】再生の能力として考えたときにはそうですね。

【能勢】だから、これから使われていく音階だと思う。僕の死後になるかもしれないけど使う人が出てきてくれれば嬉しいですね。ライブハウスで音楽の現場に35年程いて、感じてきた音楽に対する問題意識ですので、JINMO『Ascension Spectacle』は一種の遺言みたいなものです。

【横山】でも、感じれるやつは絶対にいると思いますよ。例えば一つのAに関しても耳がいい人は一つの実音に対して3つぐらい音をもっていますからね。そこを計算しながらギター弾けたらすごく楽なんですよ。色んな音を感じれるから…。少ない音数でも済むし。極端に歪まさなくてもいい。そういうとこだと思います。それを何にもわからずに足元にバーっとエフェクター類を広げて音量だけ上げて"ガー"ってやるのは、さてどうだろう? 音量と音圧はまったく違って、それを分かっていない奴は絶対にアンプを飛ばす(笑)。被害がいっぱい出る。

【河原】音数が少なくてやれるっていうのは大事だと思うね。

【能勢】デジタル卓を導入した理由は、ピアニッシモみたいな弱小音から、一番ガーンとくる最大音までをバンドが出したとしても、大箱(箱=ライブハウスのこと)だったら弱小音がどうしても埋もれてしまう。大箱で弱小音を隅々まで届けようとすると、どうしても音量を上げていかなければならない。そうすると消え入るような弱小音では無くなるわけです。矛盾ですよね。そうしてみるとペパーランドみたいな小さい箱のほうが、一番微弱な音から最大音までを聴かす環境にあるわけです。大箱だったらダイナミックレンジを相対的に作るしか方法が無いわけですが、ペパーランドのような小箱では最弱音を相対的に作る必要がなく、そのまま消え入るような最弱音を使えるわけです。大箱の宿命である音の伝達距離と聴衆の雑踏が少ないわけですから、ペパーランドのような小箱が音についてはダイナミックレンジが一番広くとれるんです。これはイギリスにあるスピーカーメーカーであり、サウンドクオリティーの高いトランステクノをリリースしているBLUEROOMのコンセプトとも繋がっていることです。小さい音をどこまで最弱音のままで聴かすかといったときに、一番ダメージを受けやすい小さな音を、いかにノイズが少なく歪みなく取り扱うことができるのか?ということが問題になってきます。歪みの少ない卓でなかったらその小さい音って届かないですよね。だから小箱ほどデジタルミキサーがベストだとと思う。やはり、ヨーロッパのシンフォニーホールの伝統がBLUEROOMには生きているのだと思う。

【河原】やる側としては、小さい音がきっちり届くのはものすごく気持ちいいと思う。

【横山】大きい音から音量がきれいにストンと落ちるとき、ちゃんと音が出てくれていたらすごく気持ちがいいですよ。

【能勢】それがダイナミックレンジですよね。大きな箱でダイナミックレンジを出そうとしたって、小さい音は人ごみでとかで埋もれるんで、ペパーランドみたいな小さい箱が一番デジタル卓が合うんだと思います。それで導入したのです。

【横山】感謝してますよ。

【能勢】いえいえ。それで今、横山さんが言っていたミュージシャンが倍音のことを意識すると音楽がわかりやすくなるという話ですが、そこら辺の話をもうちょとしていただけたらと思います。

【横山】それはもう単純なことで、例えば倍音って、今の子にそんな難しいことを言っても分からないし、そうじゃなくて、例えばドラムだとしたらちゃんと鳴らす。裏のヘッドの意味を知る。例えばメロタムって裏のヘッドが無い太鼓もあるわけで、どういう実音を出して、どういうサスティーンが欲しいのか? ちゃんと音作りがわかっていない。ギターに関しても今の子は開放弦か、せめてやっても5フレットか12フレットのハーモニクスでチューニングする。チューナーを意識しないっていうか、チューナーを意識することはすごく重要なんだけど、そうじゃなくて、クロマチックでチューニングする。EBGAでちゃんとチューニングする。例えば、それが3フレット抑えたときに次の曲の実音でチューニングするっていうことがすごく大事で、別に次の曲は開放を使わないのに開放でチューニングして、いきなり"ジャーン"とかしている。フレットには高さがあるわけで、ハーモニックが出る位置も決まっているじゃないですか。そのハーモニックを意識せずにチューニングしている。ただ単に3フレットで、クロマチックでチューニングするだけでも全然変わってくると思うよ。バンドの実音が!!! でも、それを最近の若い子は開放弦でチューニングしている。せっかく「クロマチックチューナー」っていう便利なものがあるわけだから、次の曲がGならGでチューニングするべきだと思うよ。微妙にフレットの高さ分だけチューニングが違うわけだから、そこを合わせないと駄目だと思うんですよ。それだけでも全然違うから。いくらEで開放弦で合わせても、Gを弾いたときに自分の運指や、指の太さ、そのときのゲージなんかで全く変わってくるし、それがバンドで大音量を出して歪ませたときに一番出るのが倍音なんですよ。

【河原】ズレが増幅されるもんな。

【横山】そうそう。だから開放弦であっていても、Gで狂っていたら意味が無い。それだけの感覚でもバンドのサウンドが"ガン"と上がると思うんですよ。そうなってくると全然PAも楽だし。濁りが切れるということは中音がはっきりする。ボリュームも上げなくてすむ。ドラムでもサスティーン、例えば姫路の「ベータ」(ライブハウス)というところは、ドラムを下からも録るんですよ。スナッピー側も。これだけでも全然倍音が違う。「何で下からも録るんですか」って聞いたら、最近のドラムはサスティーンが下手だというんです。そうじゃなくて、つら(打面)だけでもいいからカッチリとチューニングすればいい。バスドラのヘッドのビーターにしたって、ウッドとフェルトだったら全然倍音の出方が違うんですよ。スティックひとつでも違うし。バンドの練習を高いお金を出して練習スタジオでやっているんだったら、そこまでこだわって、裏の音を意識しながらやらなければ意味が無い。「自分が聴きたい」音作りじゃなくて、「バンドに対しての音作り」をする。それはお互いのパートを分かり合わないと駄目なわけで、今日の始めの話に戻るけど、「こういう音が出したい」とか「こういう音はちょっと欲しくない」とか、お互いに話し合って音を作っていく作業を最近のバンドは本当に無くって、「はい、エフェクター並べました」、「ボリューム上げました」、"カンカンカン"って始める。もうちょっと出音に対してのこだわり、そのバンドに合った倍音に関してディスカッションして欲しい。オクターブピッチも合っていないギターでハーモニックスでチューニングしてもおかしいじゃない? だからクロマチックでチューニングするということがすごく大事なんですよ。それだけでバンドのサウンドが全く変わると思う。クランチというちょっと弱めの歪みにしても、ソロのときの歪みにしても、全然ポイントが変わってくると思うよ。そういうことを理解して欲しい!!!オクターブピッチが合っているギターを持っている人も少ない。12フレットから例えば22フレットまでのチューニングが合っていなかったら、開放で合わせてもハイフレットになったら当然チューニングが合っていないわけで、チューニングが合っていない=歪み=倍音なわけで、やっぱり倍音が濁るとどうしても音が前に出なくなるから、ドラマーだったら力んでしまうし、どんどん不要な音量が上がっていくし、ボーカルもがなっちゃうし。あげくのはて結局スピーカーを飛ばしたりして迷惑をかける。

【能勢】倍音が濁ると聴いていて疲れるし。

【横山】そうなんですよ。



●倍音を使うなら最低クロマチック・チューニングをしろ!!!

【河原】ちゃんと響きあうポイントっていうのを見つけないといけない。

【横山】それがバンドで全部違うんですよ。

【河原】曲によっても違うし。

【横山】だからしっかりチューニングするっていうのはすごく大事で、それはEの開放ではないっていうのを知って欲しい。最近は「サークル・フレッティング」とか、「バジフェイトン・チューニングシステム」とかって言って、微妙にフレットが倍音にあわせて曲がっているんですよ。そういうようなものも出ています。エレキギターがミドルの楽器だって分かっていなくて、トレブルが5でミドルが2ぐらいでベースが8ぐらいのドンシャリなバンド、それはそういうバンドでいいかもしれないけど、何にもそこの部分を埋めるものが無くてスカスカだったりして、自分の中で物足りないからガンガンボリュームを上げていっちゃう。そしたらまた、スピーカーが飛んじゃう(笑)。

【河原】だから響きあうところが分かっていないから、音量を上げてしまう。

【横山】そうそう、音圧じゃないわけで、倍音が作る音量。そうすれは自然と音圧も伴ってくる。その元になっているのは楽器なわけで、楽器に対する意識が低い。響きあう部分に対しての第一歩がチューニングであって、開放を信用するなって!!!

【能勢】全くその通りです。

【河原】それは大事!!!

【横山】だからJINMO『Ascension Spectacle』で分かって欲しいのはそういうことです。AだったらAで、Aの開放じゃなくて、そのバンドの中で、開放がメインなのか、5フレットのAなのか、5フレットならそこでクロマチックでチューニングするべきです。今の子はそこに対してのこだわりが無さ過ぎる。

【河原】だから何べんも言うけど、聴いてきた「感覚」が違うんだと思う。

【能勢】その問題です。僕が『Ascension Spectacle』をリリースしたわけは倍音に対する理解とミュージシャンの「感覚」を変えたかったんです。

【横山】あと、楽器に対する思いも違うんだと思うよ。やっぱりチューニングというのが一番大事だと思う。倍音を生かして響き合って、それが、グルーヴに繋がるんだと思うよ。バンドでしか出せないサウンド、うねりっていう…。

【能勢】バンドサウンドにしてもDJサウンドにしても総て音は完全な倍音の響きになったら、伝達力がものすごく強くなりますよね。

【横山】そうです!!! それでいて聴いていても気持ちがいいんですよ。その意識がすごく大事だと思う。結成して1〜2年のバンドには難しいと思うけど。倍音と言うのは個人個人で違うから、いくら上手い奴を入れても全く音の出し方が違ったり、倍音がぶつかり合えば駄目だし。自分のパートだから他人の倍音を意識するっていう…。

【能勢】(『Ascension Spectacle』を開き)ここに202個の周波数を公開しているわけですが、この音階を見てどう思われますか?

【横山】基本的にAなんですよね、全部。

【能勢】その通りです、A音一音しかありません!!! 極端な話し強力にコンプレッサーをかけてしまうとAの一音しか鳴りませんよ。そこで、JINMOさんはかっての音楽の三要素(メロディー、リズム、ハーモニー)を考え直す必要が生じたわけです。テクノミュージックが珍しくない時代になって、JINMOさんは音量の周期的変化であるベロシティーがリズムであり、音量であるピアニッシモやクレッセントもベロシティーの属性であるとする。そして、スペクトル分布がメロディーとハーモニー、音色の双方に関与し、この『Ascension Spectacle』ではメロディーもハーモニーも区別が無くなるわけです。その上、新たな要素がパンニングという位置情報がこの作品に加えられたわけです。新しい音楽の三要素はこのように捉えられなければならないとJINMOさんは「Ascension Spectacle Install」で明言されたわけです。しかも、自然倍音完全音階で演奏される世界には不協和音が当然のことながら生じません。これまで、ピアノにしてもギターにしてもランダムに音を重ねると不協和音が生じるわけですので、コードの練習が必要になってきたわけです。自然倍音完全音階では本当に自由に思う音階を感情の高まりに合わせて弾けば良いわけです。どの音も完全調和していますから耳障りな不協和音が生じることはあり得ないわけです。

【横山】例えばギターを弾いていて、4度と5度の音をハーモナイザーで足した音は、シンセにハーモナイザーをかけてもあんな音にはならないんですよ。ギターに下に4度、上に5度くらいハーモナイザーをかけたときに、どうしてもその3つの音以外の音が聴こえてくるんですよ。そういう成分が多いほどちゃんとしたギターであって、『Ascension Spectacle』ではJINMOさんはスタインバーガーを使っていますけど、このヘッドレスギターはものすごく余分な倍音が無いんですよ。これはグラファイトでできていて。僕も初めてヘッドレスのギターを使ったときに、倍音が少なくてちゃんとチューニングしないと「気持ちが悪い」感じがしました。実際これでハーモナイザーを使ったり、イーボーを使ったりして音を出して歪ましたりすると、逆に倍音がたくさん聴こえてくるんですよ。それって、「このギターの調子が悪いのかな?」とか思ったりしたんですけど、そうじゃなくて、これが純正な倍音の音なんだと感じました。

【能勢】僕もそう思います。JINMOさんが『Ascension Spectacle』を作るときにグラファイトのギターに弦を張ってその音をサンプリングして、その中に純正な倍音が含まれているじゃないですか。それをひとつずつ抽出して、1本の弦の中にある倍音を拾い出していってるんですよ。だから『Ascension Spectacle』は一本の弦が鳴っている世界なんです。

【横山】だからこれを部屋で、同じようなヘッドレスギターで、フロントピックアップを使って、イーボーとハーモナイザーでシュミレートしてみたら、ものすごく音がスペイシーなんよ。それにびっくりして。ちょっと今やってみようか?せっかくだから(笑)。


♪♪横山氏がJINMO『Ascension Spectacle』の倍音構造を演奏でシュミレートする


【横山】(演奏を終えて…)ただ単にひとつの音をハーモナイズするだけでも、これだけの倍音が出るわけじゃないですか。こういう意識をバンドの中で持っていて、実音の後ろにこれだけ音が鳴っているということが分かれば全然バンドの音が変わると思う。『Ascension Spectacle』を聴いてすぐにやってみたくなりました。ほとんどさっきのCDと似ていると思います。

【能勢】同じような音の響きですね…。

【横山】『Ascension Spectacle』を聴いたときに、「これ出せるな」って思ったんですよ!!! 一番リアルに聴かせてあげることができる。今のもAしか鳴っていないわけで、3つ音を出したら曲になるからな。

【能勢】その弦の中で同時に鳴っている倍音は整数比でできている。無理数ではない。それをJINMOさんの場合はプラトンがやったようにギターをモノコード使用して、「神聖一弦琴」に見立てて、何度も何度もサンプリングしてコンピュータに取り込み、自然倍音の部分を抽出し、完全音階として組み立てている音階なんです。「オクターブとして考えるとどうなのか?」をJINMOさんに聞いたら、ハリー・パーチが43音階を1オクターブに取るのと同じように、例え500音あってもオクターブと考えたらそれはそれで成立するということでした。

【横山】音の揺らぎ方がすごい!!! 理屈では説明できない揺らぎ方なんです。だから揺らぎに対する耳の感覚が一番大事だと思います。これは何を持って正音かっていうことです。正音をもっと超越した響きというものが大事なんじゃないかな。そういう意識をミュージシャンが持っていれば最強だと思うけど…。

【能勢】ポーリン・オリベロスというアメリカ人の女性のミュージシャンがいるんですが、彼女はアメリカの電子ノイズのミュージシャンとしてスタートするのですけれど、途中からアコーディオンを弾き出すんですよ。アコーディオンのリードを職人に加工してもらって、純正調音階にカスタマイズしていきます。最初は、5度と7度を左右に割り振ったアコーディオンで普通に演奏して、差音の独特の揺らぎの有る音を使った演奏のスタイルとして聴かせていました。この段階でも純正調音階だから十二音階と違って素晴しく響くんですよ。次に彼女が「ディープ・リスニング」というのを言い出して、「注意深く聴く」という意味ですが、深さ14feet(約4.5m)の空になったワシントン州の貯水槽の中で演奏していきます。その残響時間が45秒とかで、音を出すと45秒間音がディレイ状態で残るわけですから、前の音に次の音が重なる。そして、次々音を注意深く重ねていく。もし、そこで変な音階だと音がカオス状になるわけです。十二平均律ではすぐにカオスになります。ピアノの鍵盤を一気に全部同時に鳴らしたときに出る濁った不協和音のような状態になっていくわけです。それを完全にアジャストした純正調だったら、音が重なりながらきれいに響いていて、ずーっと透明なんですよ。そのCD(『Deep Listening』)を聴いた時は衝撃を受けました。それでこれからは"響き"というものを扱えなかったら、おそらく音楽が駄目だろうと…。

【横山】でしょうね。

【能勢】今日使われている十二平均律の音楽のスタイルというのもありだと思うし、否定する気はない。今回提示した新音階を使った音楽が広まっていけば、今日の音楽が未来に於て、むしろ「懐かしいもの」として聴かれる時代が来るというぐらいに思っているんですよ。




●音を最も力強く使いたいなら自然倍音しかない!!!

【横山】最近でもディレイを使って1人でループをさせてループステーションなんかでやっていますね。

【能勢】しかし、ほとんどのミュージシャンは十二平均律音階でやっているから、そこまでできないじゃないですか。

【横山】できないです。裏の倍音がディレイの中で遅れていって、ループさせて、それが自然の空間で出来ているのは、ものすごく心地いいかもしれんなあ…。

【能勢】ポーリン・オリベロスにしても純正調音階だから、厳密に言えばズレをもっているんですよ。人間の耳があまり感じれないズレなんですけど…。やはり充分ではない。JINMOさんに完全に合う音階を作ってもらえないかと言って、こういうものが出来ました。

【横山】すごいなあ。プレイヤーとしてやっぱり倍音の深さが分かりますな。まだ感じられていない、聴けれてない部分はたくさんある。僕らは昔から「倍音、倍音」って言っていていたのですけど、僕が『Ascension Spectacle』を見たときに、一番びっくりしたのが「こんなにあるのか!!!」ということでした。「まだまだだなあ」と思いますね。響きというのはバンドの中で混ざったりする。音が詰まり過ぎていれば、その響きも感じられないわけで、"スカスカ"のサウンドも大事です。お互いの倍音をちゃんと響かせられないと駄目ですね。

【能勢】僕が夢のように思っているのは、バンドが最高にテンションを上げ"ガーン"と音が出しているときも、音が完全に倍音関係にあったら、ものすごく強い音がストレートに来る、そういう演奏が出来る音階を見せたかったということです。もちろん、サビでない、間の軽い音のときでも倍音関係がきれいに保たれていたら、その一音一音がどれだけ強く音が出るのかと思います。

【横山】倍音っていうのは一つの音に対して3つぐらいだと考えていたけど、『Ascension Spectacle』を見てこんなにたくさんあるのかと、それがすごくびっくりした。それとチューニングをもっとシビアにしないといけないと改めて感じました。これだけ倍音を意識したら全然音作りが変わってくる。ギターのゲージ一つでも変わってくるし。

【河原】理屈では(理論的には)倍音っていくらでもあるんで、理屈は立つけどなあ…。

【横山】まあなあ。そういうわけじゃなくて、実際音を出してみてそこを意識するっていうのはすごく大事だと思う。

【河原】でも完璧な倍音関係で嫌な音を出されたら?

【横山】最悪だろそれは(笑)。めちゃめちゃ腹立つわ!!!(笑)

【能勢】でも、「嫌な」感情もちゃんと伝わると思いますよ。倍音のほうがより強烈に!!!(大笑)

【河原】だから、ちゃんと伝わるから嫌だな…。(大笑)

【能勢】そうそう。

【横山】そこで一番重要なのはドラムだと思います。ドラムには音階が無い。でもバンドの中で一番の生の音で、プレーヤーとしたら中音が一番大事で、そこで中心になるのがドラムだから…。

【河原】ラップとかMCが倍音を意識しだすとそれが究極だと思うな。言葉の伝わり方も全然違うと思う。

【横山】自然音なんてほとんど倍音だから、楽器が自然音に近づけるように考えてくると最強やな。

【能勢】ソニック・ユースがすごく影響を受けたグレン・ブランカみたいな人は、マレット・ギターと呼ばれる開放弦を純正調にチューニングしてオープンコードで演奏することを前提に複数のギター奏者を用意してポジションを押さえない演奏をするわけです。だからクロマチックなんですよ。

【横山】なるほど。

【能勢】だからそのギターを4〜5本用意して、ただ弾くだけなんですよ。

【河原】それは6弦のギターですか?

【能勢】そうです。写真で見る限り普通のギターですね。

【横山】すごいなあ、それは。

【能勢】グレン・ブランカの演奏に対し、ジョン・ケージが「グレン・ブランカの音はファシストだ」と言ったという話があります。つまり音が倍音構成に成りやすく響き合っているからケージは音が強すぎると感じたんです。

【横山】でもそれが究極的には気持ちいいのかもしれないな。

【河原】チューニングされたドラムみたいですね。

【横山】倍音を意識していないミュージシャンのほうが多い。インタビューでは言えない話がたくさん有るけど(笑)。『Ascension Spectacle』はまだまだ僕も勉強中で、やっていって分かってくることもあると思うんですよ。能勢さんがこれだけかけてやったものを、僕らがパッとやってもすぐに理解できないし、4度と5度をハーモナイズしてあそこまで音が聴こえるんだって、あれはもうかなり感動しました。さっき(横山氏の演奏でシュミレート)はAしか弾いていないけど、あれでBフラットとか気色の悪いコードを800ぐらいディレイをかけると、ものすごく気持ち悪、良いよ(笑)。今回のこれ(シュミレート)で、一人でライブをやってみようかなって思ったんです。

【能勢】その時はステージでこのCD+BOOKLETのことを告知してください。

【横山】当然です!!! このCD+BOOKLETは実践的な明確な説明をステージで加えた方がいいと思いますね。

【横山】不思議なのはリバーブだけでも倍音が変わるんです。さっきのハーモナイザーにちょっとデジタルリバーブを入れただけで倍音のうねりが全然変わってくる。そういうこともこれからやっていこうかなと思います。大事なことなんで後輩に伝えていかないと(笑)。

【能勢】横山さんに『Ascension Spectacle』で取り扱っている内容が「大事なことだ」と言っていただけたんで、リリースの苦労が報われたです。

【横山】僕は本当にびっくりしましたから。すごくうれしかったです。『Ascension Spectacle』が出た頃は、ちょうど仕事で精神状態が参っていたときで、JINMOさんの『Ascension Spectacle』を聴いていたら怖くなって、不安になってきた。自分の状態によって音の捉え方って変わるじゃないですか。音によって精神的なものも左右される部分、それも倍音にもあるなと思いました。何かいろんなことを考えたなあ。

【河原】僕は音のシャワーみたいな感じで、寝てしまったけどなあ…。

【横山】分かる。途中で気持ちよくって、僕も寝ちゃったこともある。

【河原】"ダー"って降りてくる感じがすごくあって、遠いところに元の音があるっていう感じも分かるし。



●自分の内側に響く倍音と出会い、揺れる倍音の謎を知れ!!!

【能勢】しかも倍音が揺れていますからね。

【横山】そうなんですよ。揺れ方も半端じゃないでしょ!!!

【能勢】ここでは話が長くなりますので話しませんが、EMDRという手法を使っています。EMDRとは精神分析医のフランシーネ・シャピローが眼球運動に端を発し発見した、脱感作用を用いた治療理論のことで、ペパーランドのレーベル名にもEMDR関連の用語を用いていますし、最初のCDリリース作品(『Rapid Eye』R-EMCD-001)はクラスト系の音楽ですが、この音楽のジャンルはグラインド感が無ければ良いものにはなりません。そのグラインド感がEMDRと密接な関係があります。このようにペパーランドがリリースするCDをデコードしていただければ一貫した流れがあることに気付いていただけます。デコードの手掛かりは、サウンドはもちろんのこと、デザイン、ライナーノーツにも残しています。脱線してすみません。揺れ方の話しですよね。

【横山】いえいえ。不思議なんだけど、ストラトとかでやると、全然ニュアンスが違うんよ。余計な変な倍音が出る。

【河原】それはその楽器の特徴じゃない。

【横山】そうなんよ。だからすごく倍音を響かそうと思ったら、JINMOさんの使ったヘッドレスっていう楽器はすごいんです。持っていてよかった(笑)。

【能勢】(『Ascension Spectacle』を開き)これは同じ楽器ですか?

【横山】はい。ほとんど近いです。ちょっと改造していますけど。ストラトとかにギターシンセのマイクをつけるとスピードが遅いんですよ。で、これにつけると速いんよ。

【横山】この『Ascension Spectacle』は広めます。一回、実践もしてみたい。

【能勢】それで、今トランスシーンも含め一番新しいところがドローンに近いんです。

【横山】倍音じゃないですか!!!

【能勢】その通りなんです。ただ今のドローンはエレクトロニカを通過して出てきているから、民族音楽や自然のドローンではなくテクノの音なんですよ。そのような動向(本誌のFM『MUSICK SPECTACLE』放送LIST参照)を見るにつけ、だんだん響きを聴きはじめたのかな?という予感を持っています。これから先、倍音とか響きの強さ、倍音の質というものを求められる時代が来ると思っているんだけど…。

【横山】絶対にそうだと思いますよ。来て欲しいし。プレーヤーとしてどうやって表現するのかということを再三、河原さんとも話をするんだけど、「くる・こない」っていう言葉がありますよね。キターとか。「くる」っていう時は自分の中で足して聴いている。それが振動、響きなんです。それって何なのなのかなって思います。

【能勢】一般に「演奏者が作り出している」って言うんだけど違いますよね。

【横山】絶対に違うでしょ!!! それって、すごく人に説明したいんだけど、説明できない。それを表現する言葉として「倍音」というものを使っていいんじゃないかなと思います。

【河原】自分の内側に響く倍音と出会うときに「くる!!!」っていう感じじゃないかな。

【横山】そうそう。

【河原】聴こえ方は違うけど、体調に関係なく"鳴る"ところはある。

【能勢】多分それは星の関係だと思います。宇宙空間が1回転する大プラトン年の中に音階の比率が全部仕込まれているという話をここに(『Ascension Spectacle』を開き)載せています。しかもそれが人間の一日の脈拍数と呼吸数を掛けた数と等しいんです。だからおそらくこの惑星作用の部分と実は関係が深い。楽器で用いる倍音はエーテル的な力が感情を支えるアストラルに語りかけていることの関係と無関係でないからでしょう…。としか今は言えない。

【横山】Aに対する音の聴き方って一人ずつ違うものな…。

【河原】A界隈だものな(大笑)。

【横山】そうなんよ。それをお互いに認めることですね。何回も言ってるけどそれを意識することがすごく大事。

【河原】だからA界隈をAだと妥協して出している奴らが多いんよ。

【横山】そうなんよ。で…、チューナーって安心するじゃない(大笑)。

【河原】いいわけだよな。

【横山】チューナーじゃない部分が大事なわけで。耳じゃない、感じる部分とか、響きとか。

【河原】自分のギターは1、2弦をちょっと高めにチューニングするってことあるじゃない。

【横山】あるある。例えば、僕だけちゃんとチューニングしていて、人が弾いたら狂っているように聴こえるが。自分が弾けばちゃんと合っているんよ。

【河原】自分ひとりでやっているときは、1弦をちょっと高めにしている。なんでか分からないけど、弾いた感じで、ちゃんと合わすよりもちょっと高めのほうがいいかなって。

【横山】自分の中では不思議なんだけど、ギターの鳴りって3弦がメインなんです。昔から3弦が鳴らないギターって駄目だと思う。バランスの悪いギターって3弦が鳴らない。それが、『Ascension Spectacle』を見たら倍音の捉え方なのかって、自分にとっての鳴るギターのポイントって、3弦の開放だったのかもしれない。3弦って一番曖昧な弦なんですよ。それがきっちり鳴ってくれると、「いいんじゃない」って思いますね。

【河原】ストロークで弾く時って3弦が一番力が抜けるところじゃない(笑)。

【横山】そうなんよな。でもそういうことを人に言ったときに、「意味が分からん」って言われたなあ…。

【能勢】3弦が鳴らなければ、低音と高音が繋がらないですよね。それは致命傷だ。

【横山】そうなんですよ。自分のプレイに合ったゲージの太さってある。それがどうしても3弦のテンションだったりしますね。石原君(前述バンドのケッチ)とかはすごくLowよりですよね。彼は彼で、そこが彼のバランスであって、びっくりするぐらい太い弦を張っている…。でも、そこがきっちり鳴るっていうのが石原君のポジションであって。それによって完全にスタイルが変わってくる。そこを感じれているっていうのは、倍音であって、響きなわけです。それが軸になってバランスにもなっている。

【河原】ちゃんと響きを感じているやつは出音が強いよな。石原君なんか音がごっついものな。まだ若いのに。

【能勢】年齢は関係ないでしょうけど(大笑)。『Ascension Spectacle』に関してのことは大体話されましたか?

【横山】もうちょっと詳しく自分の中で解読して、ライブで出来るようにしますから。そのときに解説しながらステージで出来るように頑張ります!!! でもちょっと掴んでいるでしょ?

【河原】掴んでいる。

【横山】バンドのために実際に使えるように、もうちょっと分かりやすくしてあげたい。

【河原】普通の曲をやったらいいんじゃない?

【横山】だからそれをどういう風にチョイスして、どういうような音作りにするかっていうのはこれからの課題かな。やりますわ!!!

【能勢】分かりました。決意まで聞けて嬉しいです。長時間ありがとうございました。


【再録:向井宏志】